私たちは、生活の一部として日常的にプラスチックを使用しています。便利な反面、環境面ではプラスチックが地球環境に与える影響や対策を「プラスチックごみ問題」として将来に向けて考えていく必要があります。
今回はプラスチックがもたらす影響や被害、脱プラスチックの取り組み、代替品の素材についてご紹介します。
脱プラスチック プラから紙への動きと現状
高い耐久性を持ち、加工のしやすいプラスチックは日常生活のあらゆる部分で利用されています。非常に便利でコストが安く、簡単に入手できることから手軽に使用できますが、その分、手軽に廃棄もされています。
しかし、捨てられたプラスチックが土や海底に溜まることで生物などの生態系に悪影響を与えており、見過ごせない事態となっているのです。
プラスチックの問題点とリサイクルの限界
それでは、プラスチックにおける問題とは、どのようなものがあるか再認識しましょう。
・生産・廃棄で温室効果ガスが発生し、地球温暖化の原因の一つとなっている
・原材料が石油資源であるため有限である
・大量のプラスチックが海に流れ、生態系を壊す原因の一つとなっている
世界的に問題となっているのが、捨てられたプラスチックが河川などから海洋に流出し、海を汚染している事象です。その量は、毎年800万トン以上とも言われています。
リサイクルが進んでいるイメージの日本ですが、プラスチックごみ排出量はアメリカに次いで実は世界第2位の多さで約850万トン以上もあり、そのうち約47%は使い捨てプラスチックの容器です。
食品容器などを代表とする過剰な包装や消費者の利便性を追求した結果、プラスチックごみが増え続けているのです。
廃棄されたプラスチック製品のうち、約79%が埋め立てや投棄によって処分され、約12%が焼却処理されています。プラスチックのリサイクルについては、材料として再生利用をする「マテリアルリサイクル」は約22%程度。約61%は焼却処分されているのが実情です。再利用されているイメージがあるペットボトルでも、十分にリサイクルは進んでいません。
世界での脱プラスチックの取り組み
現在、世界では様々な規制によりプラスチックの使用を禁止としている国が多くあります。
例えば、EUでは海洋汚染を防ぐために「脱プラスチック」の指令を公布し、使い捨てプラスチック製品の削減や循環経済実現に向けた取り組みをしています。2030年までに、EU内全てのプラスチック包装材をリユース・リサイクルすることを目指しています。
アメリカでは、2020年にプラスチック協定が制定されました。プラスチック協定は2025年までにプラスチック汚染の削減を目指すために4つの目標を掲げ、再利用・リサイクル・堆肥化できない素材など問題のあるプラスチックのリストを発表しました。ストローや食器、マドラーなどが対象となっており、これらの製品の代替品に関する指針を2025年までに作成することになっています。
日本でのプラスチックごみへの取り組み
日本においても2020年7月1日よりプラスチック製レジ袋が有料化されたこともあり、自治体や企業による脱プラスチックへの動きがでてきています。徳島県上勝町では、町民一人ひとりがゴミ削減に努めリサイクル率80%以上を達成。2030年に向けて「ゼロ・ウェイスト宣言」を掲げています。
食品業界のプラスチックごみ削減へ
日本では衛生面を考慮して、過剰に包装された製品が数多くあります。とくに食品業界は、外袋、小袋、容器など小分けして保存しているケースもあり、プラスチックのごみを増やしてしまう要因となっています。
また、新型コロナウィルス感染症における外出自粛により、テイクアウトやデリバリーの需要が高まりました。テイクアウトやデリバリーで使用される使い捨て容器などはプラスチック素材が多いため、コロナ禍がプラスチックごみの急増を引き起こしています。
プラスチック代替品として、プラから紙へ 紙ストロー化など事例紹介
プラスチックごみを減らすために様々な代替品の素材が開発されています。プラスチックは自然界で分解されない性質上、代替品で置き換える手法が環境配慮への一歩となります。
プラスチック代替品の素材例
- 寒天 ところてんやゼリーの素材として有名です。割れやすいものを包む緩衝材の代替品として利用されています。
- 石灰石 石油由来の樹脂などと混ぜることでレジ袋やクリアファイルなどの代替品として利用できます。
- 麦わら プラスチックストローの代替品として注目されています。自然由来の麦わらストローは自然に還ります。
- 紙 木材が原料なので、プラスチックよりリサイクル率が高く、汎用性があります。最近では、プラスチック製品の紙素材へ移行が加速しています。
プラスチックから紙に変わっている事例
どのようなものがプラスチックから紙素材へ移行しているのか、その一例をご紹介します。
- レジ袋 スーパーやコンビニなど日常的によく使われるものですが、最近ではレジ袋有料化に加えて、紙袋に移行する動きもあります。
- ストロー レストランやカフェ、コンビニコーヒーなど多くの飲食店がプラスチック製でしたが、前述した麦わらストローや紙製ストローを導入する企業が多くなってきています。
- 食品容器 コンビニ・スーパーなどではまだ大半がプラスチック製です。紙製の食品容器には電子レンジでの温め対応、水分や油分で破れないかなどの課題もありますが、これらも紙製への移行が実現されつつあります。
脱プラへの当社の考え方
2022年4月1日に施行された「プラスチック資源循環促進法」に則り、当社もプラスチック資源循環に促進とプラスチックごみの削減に取り組んでいく所存です。
プラスチック資源循環に関しては、代替品としてのプラから紙に切り替えることで環境に配慮し、プラスチックごみの削減に貢献できればと思っております。
プラスチックから紙に移行できる「硬い紙」の事例
脱プラ、プラから紙に移行できる注目の紙を当社の協力会社から紹介します。これまでにご紹介した食品容器やレジ袋などといった事例とは違い、耐久性や加工に優れている硬い紙を利用しているため、硬さが必要な製品の紙製品への移行を実現しています。
紙を超えた強度、パスコと事例
北越コーポレーションが開発した硬質繊維ボード「パスコ」。木材繊維を主原料とした硬い紙の代表素材です。店舗什器、ボックスなどの生活インテリアから産業資材などさまざまな用途・フィールドで利用されています。
パスコは、環境に配慮しているだけでなく、「強度」「耐久性」「加工適正」の高い紙です。また強度劣化や形状変化が少なく、さらに小ロット生産が可能な素材です。
事例① キャリーバッグ
厳しい条件下で使用されるキャリーバック。強度・耐久性と加工性(リベット加工、R曲げ加工)が用途の可能性を広げます。さらに天然素材独特の素材感が、他素材との差別化を可能にします。
事例② 店舗什器
パスコの強度と素材感はその機能は勿論、“見せる収納”を可能にします。さらに型無しでの加工も可能なため、各店舗のご要望に合ったデザイン、サイズで一個からでも製品供給が出来ます。
事例③ 溶接面
軽量さ、強度、加工適性(安価な型代で小ロット対応可)が特長の溶接面マスクです。その特性はさまざまな用途への活用の余地を秘めています。
事例④ 靴中底
抜群の強度と通気性を両立するパスコは、靴中底として日本の製靴産業でも圧倒的なシェアを誇っています。フラッグシップラインには欠かせないアイテムです。
工業製品の材料としての代替品 バルカナイズドファイバーと事例
北越東洋ファイバーの硬質繊維ボード「バルカナイズドファイバー」。原料となる紙を薬品処理することで、セルロースをナノレベルまで解繊、強固に結び付けたセルロースナノファイバー材料の1つです。
優れた強靭性により、粘り強く割れにくい紙です。また絶縁性が優れているため、電気に強い紙として、様々な工業製品の材料として用いられています。
事例① 電気機器部品
スピーカー部品、ワッシャー、モーターの部品、 ブレーカーの部品、電子部品の容器・仕切り板、乾電池周辺部品、ペットフィルムと貼合した電気絶縁用。
事例② 研磨機械用途
耐衝撃性、耐磨耗性、耐熱性、樹脂接着性を生かして 研磨ディスクや研磨ベルトの基材に。
事例③ 教材・文具・服飾関係
自然派素材の暖かみと加工性を生かして学校工作の材料・ 紙クリップ。環境に配慮したファイバーフック。
「硬い紙」「環境に優しい紙」をまとめてご紹介
パスコ・バルカナイズドファイバーの他に「硬い紙」の情報は下記で解説しております。
「環境に優しい紙」をまとめて下記でご案内しております。
環境に関する記事は下記を参考にしてください。
「紙製品」を下記でまとめてご紹介
その他、様々な機能を備えた紙をご案内
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