東京都足立区 荒川ビジターセンター様が開催した『紙すき体験』イベントに、機能紙選定ナビ(弊社:株式会社田村商店)として協力させていただきました。この記事では、当日のイベント内容と、機能紙選定ナビが皆様にご提供できることについて紹介させていただきます。
イベント協力へのきっかけ
機能紙選定ナビ(弊社:株式会社田村商店)が東京都足立区 荒川ビジターセンター様の『紙すき体験』イベントにご協力することになったきっかけについて簡単に紹介いたします。
きっかけは荒川ビジターセンター様から、機能紙選定ナビにご相談をいただいたことから始まります。
私たちの施設では、様々なイベントを通じて荒川をテーマとした環境教育、普及啓発活動を行っています。この度「紙すき」をテーマとして、身近な紙・資源について考えるプログラムを実施するにあたり、様々な素材でできた紙(環境にやさしい紙)を参加者に紹介できればと思い、お問い合わせいたしました。
ー問い合わせ内容を一部抜粋ー
こちらのお問い合わせがきっかけとなり、今回のイベントにご協力させていただくことになりました。
ご協力内容としては、プログラムの内容についてのご相談、イベント内容に合った紙のご紹介とご提供という形で協力させていただきました。
- 水に強い紙 : 耐水紙
- 水に素早く溶ける紙 : 水溶紙
- 繊維をリサイクルしてできた紙 : サーキュラーコットンペーパー
- 「バナナ繊維」を原料として製造した紙 : バナナペーパー
- 「ヨシ」を原料として製造した紙 : ヨシ紙
なぜ荒川ビジターセンターで紙すき?
なぜビジターセンターで「紙すき」なのか。
実は昔、足立の農家では冬の農閑期に、使った紙をもう一度溶かして紙にする「漉き返し紙」を作るのが、重要な生業の一つでした。
今でも紙漉きの碑や紙問屋さんの建物などが残り、足立のまちと紙すきには昔からのつながりがあります。
このような話しを導入として、当時のように紙から紙を作る「紙すき体験」が行われました。
牛乳パックを活用した紙すき体験!
まずは、① 牛乳パックの紙から紙すきの材料となる「パルプ液」を作ります。全部自分たちで作るのはとても大変なので、今回は手でちぎるのとは別に、専用の機械で作った牛乳パックパルプも使いました。材料をペットボトルに入れて、きれいに溶けるまで振ります。「ちぎるの、簡単だよ!」「でも大量に作るのは大変ですね」と会話をしながら、皆さん楽しそうにパルプ液を作っていました。
② パルプ液ができたらすき枠に流し込みます。半分ほど流し込んだら、③ 荒川で採れた押し葉・押し花を好みの配置に並べました。細かくしてちりばめたり、花の形に並べたり、それぞれの個性が表れていました。残りのパルプ液を流したら水を切り、④ 乾燥させて完成です!(紙を乾燥させるのに少し時間がかかるので、待っている間に紙のリサイクルに関するクイズを行いました!)
リサイクルできる紙・できない紙クイズ
紙すきで作った紙を乾燥させてる間に、イベント参加者は「リサイクルできる紙・できない紙」についてのクイズと「紙の材料当てクイズ」に挑戦しました。
実際に以下の画像が問題として出されました。
皆さんは紙をリサイクルするには、紙が「○○に○○る」ことが大事!について、○○に入る言葉はわかりますか?
実は単純な答えなんですが、このように出題されると案外難しいかもしれませんね。
この答えを探るために、参加者の皆さんと下記の実験を行いました!
溶けやすい紙・溶けにくい紙の比較実験!
出題された問題を解決するのに、水に素早く溶ける紙(水溶紙)と、水に強い紙(耐水紙)を活用した実験を行いました!
実験に用いた紙 : 水溶紙、耐水紙、それぞれ細長くカットしたものを用意。
実際に水溶紙を水に浸けるとどうなるのか?
↓下の動画で確認できます! ↓
このように水に浸けらたすぐに紙が分散されてしまいました!
水溶紙とはその言葉通りに水に溶ける紙なので、水に浸けるとこのように分散されていきます。(実際には「水に溶ける」のではなく「素早く分散する」という表現になります)
水溶紙と一般的な紙の違いについてはこちらの解説動画でもご紹介しております。
このように「一般的な紙」と「水溶紙」では異なる性質を持っているのです。
この実験は大変好評だったようで「これはトイレットペーパーですか?」「こんなに溶ける紙があるなんてびっくりした!」という声があがりました。
上記の結果をもとに、先ほどの問題に戻り○○に入る言葉として、「○○(みず)に○○(とけ)る」ことが大事!ということがわかりました。
「紙」と一言でいっても、上記で解説したように大きく分けて「水に溶けやすい紙」と「水に溶けにくい紙」が存在します。
「水に溶けやすい紙」はリサイクルが可能です。
しかし、「水に溶けにくい紙」はリサイクルにはあまり向きません。
いつも身近にあってもあまり気にしてこなかった「紙」ですが、リサイクルできる紙とリサイクルに向かない紙があるということを体験できたと思います。
紙のリサイクルについては↓でわかりやすく解説しております。
また、実際に「リサイクルできる紙」のマークについて、リサイクルされた紙が「どのような紙に生まれ変わっているのか」について紹介しました。
紙に関するマーク探し
紙に関するマークは数多く存在します。一度は見たことがあるものや、今まで気づかなかったマーク、実際にどんな意味があり、どんな風に使われているかなど、紙に関するマークについて幅広く学びました。
紙に関するマーク例
紙製容器包装識別マーク
「紙マーク」と呼ばれ、紙製容器包装であることを識別するための紙のリサイクルマークです。紙箱、紙袋、包装紙などに使われ、素材が紙と認識するのに一番わかりやすく、日常でも見かけやすいマークの一つです。
飲料用紙パックマーク
アルミが使われていない紙パックに付けられるマークで、内側にアルミを貼っている紙製容器と区別する目的で用いられます。牛乳パックが有名な例です。
グリーンマーク
原料に古紙(リサイクルされた紙)を既定の割合以上利用していることを示すマークです。グリーンマーク表示のある紙製品を活用することで、環境配慮の取り組みに貢献できます。
FSC®森林認証ロゴマーク
FSC®とは「Forest Stewardship Council®」(森林管理協議会)の略で、責任ある森林管理を世界に普及させることを目的とし、国際的な森林認証制度を運営している独立した非営利団体のことです。
森林認証制度とは、国際的な規格をもとに、適切に管理されていると認められた森林から生産された木材や、その他適切な森林資源の使用につながる原材料を使用した製品にFSC®森林認証ラベルを付け、認証品として販売できる制度です。
FSC®認証ロゴマークが記載されている紙製品を使用することが世界の森林保全につながります。(画像は田村商店が取得したFSC®認証ロゴマークです)
これらは紙に関するマークの一例ですが、マークの意味を正しく理解することで私たちの日常生活でも環境配慮の取り組みに貢献することができます。
紙の材料当てクイズ
イベントの最後に、環境に優しい紙素材の材料当てクイズを行いました!
紙の原料には木材の細かい繊維(木材パルプ)を使用するので、多くの木を伐採する必要があります。
多くの木を伐採するということは森林破壊・環境破壊に繋がる恐れがあり注意が必要です。また、木は大きくなるまでに多くの時間が必要となります。
そのような背景から、紙の製造において木材繊維(木材パルプ)を使用せず他の素材や植物の繊維で代用して製造された紙「非木材紙」や、木材繊維(木材パルプ)の使用量を減らしてその分、他の素材や植物繊維を混ぜ込んだ「混抄紙」が生まれました。
実際にイベント参加者に混抄紙を配り、何を原料とした紙かクイズを出し、会場は盛り上がりました。
- 「バナナ繊維」を原料として製造した紙 : バナナペーパー
- 「ヨシ」を原料として製造した紙 : ヨシ紙
- 繊維をリサイクルしてできた紙 : サーキュラーコットンペーパー
バナナペーパーのにおいを嗅いで「バナナのにおいがする…気がする」「甘いにおいがしますね」と興味深そうに観察していました。
ヨシ紙の原料となる「ヨシ」は、実は荒川にもたくさん生えており、それが紙になることにも大変驚かれておりました。
サーキュラーコットンペーパーに関しても、廃棄される洋服からできた紙と知ると「いま着てる服も紙になるの?」「リサイクルってすごいね」と興味を持たれていました。
「紙すき体験」を通して伝えたいこと
イベント終了後に荒川ビジターセンター担当者さまよりコメントをいただきました。(一部抜粋)
今回は紙すき体験を通して、紙の材料やそのリサイクルについて知ってもらうことができました。これをきっかけに身近な紙に興味をもってもらえればうれしいです。
荒川ビジターセンター 担当者さまコメントより抜粋
今回参加された方のほとんどは「紙すき」を初めて体験されました。
実際に「紙すき」を体験したことで紙を作るプロセスをイメージいただき、紙の原料がどのようにして選ばれ、どのような工程を経て製品になるのか。また、紙のリサイクルの重要性や、環境に優しい紙選びについてなど、紙という日常に溶け込んでいる素材が、実は多様な背景を持ち、環境への影響と密接な関連があるということを学んでいただけたと思います。
昨今の「デジタル化」で紙の需要は激減しており、「紙は不要なもの」として取り上げられる機会が多くなりました。ですが、紙でしか表現できないものや紙の奥深さ・面白さなど、紙には独特の良さも多くあります。また、環境問題に対する取り組みとして「脱プラスチック」「SDGs」などの取り組みに「紙素材」が再注目されています。
今回の「紙すき体験」やこちらの記事から、多くの方に「紙の良さ」が伝われば幸いです。
荒川ビジターセンター様について
2024年4月7日(日)に、荒川ビジターセンターとあだち再生館が統合し、新しく「足立区環境情報プラザ」としてオープンしました。(新たな環境学習施設として生まれ変わることになりました。)
場所は同じ「学びピア21」4階で、今までのように荒川の自然とふれあうプログラムの他に、エコ工作や環境学習講座なども実施していく予定です。お近くにお越しの際はぜひ遊びに来てください。
機能紙選定ナビができること
機能紙選定ナビを運営する株式会社田村商店では多くの紙を取り扱っております。(印刷用紙・包装用紙・情報用紙・家庭紙・画用紙・板紙・和紙・特殊紙・機能紙・環境配慮紙・工業用紙など)
当サイトでは紙の相談窓口(機能紙選定ナビ)として、皆様に多様な紙の情報を発信しており、特に一般的な紙とは異なり特徴のある紙、特定の機能を備えた紙(機能紙)を中心にご紹介しております。
紙に関してお困りごと・お悩みがありましたらまずはお気軽にご相談ください。紙のプロフェッショナルがあなたの悩みの解決に尽力します。
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