ヨシとは?
ヨシ(学名: Phragmites australis)は、イネ科の多年草で、日本では弥生時代から自生し、平安時代には利用されてきました。北海道から九州にかけての湿地や干潟に広く分布し、地下茎を伸ばして大規模な群生を形成します。高さは2m〜3mで、硬く中空の茎に広線形の葉を持ちます。晩夏から初秋にかけて、長さ20〜50cmの円錐花序を形成し、暗紫色の小穂をつけます。元々は「アシ」と呼ばれていましたが、「悪」を連想させるため、「ヨシ」と呼ばれるようになりました。
ヨシの性質
ヨシは「アシ(葦)」とも呼ばれ、世界中の亜寒帯から暖帯にかけての水辺に生えています。湖や河川はもちろん、湿地や海と川の水が混ざる場所(汽水域)にも生えます。
ヨシはほかの植物と同様に、秋には穂をつけてその中に小さな種をつくります。たとえば、この種を播くと初夏には芽を出し成長します。しかし、野生のもので種から大きくなるものは稀です。
イネやムギに近いところもあるのですが、大きな違いは多年草であり、もっと背が高くなることです。冬は地中に地下茎(ちかけい 土の中にできる根のような部分)があり、春に地下茎から新しい芽が出て大きく成長する植物なのです。また、地下茎自体も地中を横に伸びて成長し、その結果ヨシ原はぐんぐん広がっていき大群落をつくります。
地面から、芽が多く出る時期は3月中頃からです。琵琶湖では南の方から北上していき、最大1ヶ月ほど差がでる年もありました。たいてい水中部分(水ヨシ)から先に芽が出るようです。芽は7月頃まで成長し、5m近くなるものまであります。北のヨシは芽出しが遅れる分成長が早いようです。8月の終わりまでには穂を出します。穂は初期には赤紫色のものも見られます。その後小さな花をつけ、小さな黒い種ができます。種ができると地上部は黄色くなって枯れます。しかし、地下茎にはたっぷりと栄養が蓄えられて、冬を越し春の芽出しに備えるのです。
ヨシ刈りについて
昔から冬に枯れたヨシの地上部分を刈り取り、ヨシ製品に使用してきました。毎年一度、ヨシの収穫があったわけです。刈り取った部分は抜け殻的な部分でヨシの生体にとっては影響がないのです。
それどころか、刈り取りを行うと次の年にはまた立派なヨシが採れると言われています。
現在も、陸上部分のヨシ原に関しては刈り取りを行わないとヨシ原は荒れることが多いようです。
伝統的なヨシ製品
葦簀(よしず)
代表的なヨシ製品で最も目にする機会の多い製品です。日よけに使われます。関東と関西で掛け方が違うのが面白いところです。
ヨシ屋根
日本の伝統的な家の屋根には、瓦が普及する前は、ヨシ、ススキ、ワラなどの屋根材が使われてきました。ススキやワラに比べて、ヨシは耐久性や排水性に優れた材料でした。
また、ヨシ屋根の家は夏涼しく冬暖かです。
夏障子
夏になると障子を夏用の涼しい障子に代える習慣がありますが、ヨシを使った夏用の障子があり、風通しがよく、涼しい感じがします。
ヨシ衝立
これも夏になると、座敷などのインテリアとして出されます。
部屋に涼やかな感じがします。
ほかに、壁掛け式の色紙掛け、花瓶敷き、和菓子の包装材料などにも使われます。
水田暗渠
一般の方にはなじみのないものですが、田んぼを掘り起こし、1メートルぐらい下に地下排水管のまわりにヨシの束を敷き詰めて埋め込み、水田の排水を良くしようとするものです。これには背の高いまっすぐなヨシが向いています。
ヨシ腐葉土
腐葉土というのは、肥料分を含んだ土のようなものではありません。水はけをよくしたり、よい土をつくったりするための土壌改良剤です。
昔から、大輪の菊を咲かせる菊の愛好家や朝顔の愛好家の中ではヨシの腐葉土がよい花を咲かせるには必需品であることは知られていました。広葉樹の葉や様々なものを混ぜて愛好家それぞれの栽培土を作って花を咲かせます。
もちろん他の花や野菜、作物にも使えます。
ヨシ紙
ヨシは紙になります。品質的には、木材パルプの紙には勝てませんが、非木材パルプ紙として有望です。中国などでは、ヨシのパルプの生産は盛んということです。
ヨシ紙とは?
ヨシ紙とは、前述した「ヨシ」を繊維状にしたものを木材繊維(パルプ)に漉き込ませ製造した紙を指します。
(ヨシ繊維を5%~100%使用し製造した紙)
一般的な紙は、木材を細かく砕いて繊維状にしたもの(パルプ)を100%使用し製造しますが、ヨシ紙のように木材パルプ以外の素材を混ぜた紙を「混抄紙」と呼びます。
その特性から環境に優しい選択肢として注目されています。以下に、ヨシ紙の特性と用途について詳しく説明します。
混抄紙とは?
紙の製造において、ほとんどは 木材の繊維(パルプ)のみで紙は造られます。
ですがこの混抄紙は、紙の材料に木材の繊維(パルプ)以外の素材を混ぜます。
そうすることで、一般的な紙にはない様々な特徴を紙に付与することができるのです。
お茶の葉
お茶の葉を混ぜることで、お茶の葉の香りがするオリジナル混抄紙が造れます。
イチョウの葉
イチョウの葉を混ぜることで、イチョウの葉の香りがするオリジナル混抄紙が造れます。
バナナの茎
バナナの茎の繊維を混ぜた混抄紙を、バナナペーパーと言います。
バナナペーパーは混抄紙の中でも有名で、アフリカのバナナ農家と協力し生まれた紙です。
今までは廃棄するのみだったバナナの茎。
そのバナナの茎を活用することで「世界の森林の保護の役割」と「途上国の貧困問題・社会問題を解決したい」という想いがバナナペーパーには込められています。
食品の皮・搾りかすなど
食品製造の過程で廃棄される皮・搾りかす等も混抄紙として活用できます。
食品関連 主な素材
・ ぶどうの皮・小豆の皮・カカオ・おから・落花生・トウモロコシの表皮・サトウキビの搾りかす ・コーヒー豆の搾りかす・ビールの搾りかす など
その他 素材
・ 芝生・エゾ松・ケナフ・竹・コットン・洋服の繊維・植物の茎 など
平和折り鶴再生紙
混抄紙で知られている用紙として「平和折り鶴再生紙」があります。
これは広島の平和記念公園内にある「原爆の子の像」に捧げられた折り鶴を回収し、再生させた用紙です。
さまざまな色の折り鶴から再生された用紙は、白い紙にカラフルな色が散りばめられ、折り鶴に託した人々の平和への願いも込められています。
混抄紙は、通常の木材パルプだけでなく、再生紙や植物由来の繊維を含むことが特徴です。このような紙は、木材を伐採する必要が少ないため、森林破壊や生態系への影響が軽減されます。また、再生紙の使用は廃棄物の削減につながり、環境への負荷が低減されます。さらに、植物由来の繊維を使用することで、化学的な処理や水の消費が少なくて済みます。そのため、混抄紙や環境に優しい紙は、森林保護や廃棄物削減などの観点から、持続可能な選択肢として注目されています。
ヨシ紙の特性
ヨシ紙は混抄紙の一例であり、その環境に優しい特性には以下の点が挙げられます。
- 再生可能な資源の利用
ヨシは、紙の原料として使用される植物の一つで、非常に速い成長速度を持っています。このため、ヨシを利用することで、新たな樹木の伐採が少なくて済み、森林資源への負担が軽減されます。再生可能な資源の利用は、森林保護に寄与します。 - CO2排出の削減
ヨシ紙の製造プロセスにおいて、木材の乾燥工程が不要です。これにより、エネルギーの使用が少なく、二酸化炭素(CO2)の排出が削減されます。持続可能な紙の製造方法として、環境に配慮されています。 - ヨシの栽培における持続可能性
ヨシの栽培は農薬や化学肥料の使用が少なく、土壌保護に貢献します。ヨシの栽培地域は水の浄化や野生生物の生息地としても重要で、持続可能な農業プラクティスの一環として位置付けられています。
ヨシは多年草の植物で、1年で枯れます。ヨシは刈り取りやヨシ焼きを行わなければ、その数は減少していきます。ヨシを紙として使用することで、ヨシの立ち枯れによる河川の流入を防ぐことができます。 - 印刷にも適した質感
ヨシ紙は滑らかで均一な質感を持ち、印刷にも適しています。高品質の印刷物を制作する際に重要な要素となります。
ヨシ紙の製造プロセス
- ヨシの収穫
最初のステップは、成熟したヨシを収穫することです。ヨシは水辺に自生し、特に湿地帯で見られます。ヨシは速い成長速度を持ち、再生可能な資源として利用されます。収穫は、ヨシの茎や葉を刈り取ることで行われます。 - パルプ化
収穫されたヨシは、パルプ化と呼ばれる工程にかけられます。パルプ化では、ヨシの繊維を取り出すために、ヨシを切り刻んで水と混ぜ、繊維を分離します。この工程には機械的な処理や化学的な処理が含まれることがあります。 - 混合と造紙
ヨシパルプと木材パルプを混ぜ合わせます。この混合パルプは、混抄紙として知られ、再生可能な植物性繊維と再生繊維を含む紙の原料となります。混抄紙の製造では、パルプが均一に混合され、紙の品質を確保します。 - 加工
混抄紙はさまざまな製品に加工されます。例えば、名刺、ハガキ、封筒、パンフレット、広告用途、アートプロジェクトなど、多様な用途があります。高品質で印刷がしやすく、環境に配慮した製品が完成します。
このように、ヨシ紙の製造プロセスは、ヨシを収穫し、パルプ化、混合、加工というステップから成り立っています。このプロセスにより、再生可能な素材の活用と木材伐採の削減が実現し、環境に優しい紙製品が製造されます。ヨシ紙はその環境への貢献と多様な用途から、持続可能性と品質を組み合わせた紙として重要な存在となっております。
ヨシ紙の用途
ヨシ紙は、その特性からさまざまな用途で活用されています。
- 名刺
ヨシ紙は名刺として使用できます。
その滑らかな質感と環境への配慮から、企業の環境への取り組みとして相手に良い印象を与えることができます。
ヨシ紙を使用した名刺(手漉き・機械漉き)購入のご相談も承っております(ご相談はこちら)
- ハガキ
ヨシ紙はハガキとして使用できます。
環境に関するイベントの招待状や特別なメッセージの伝達などにも用いられることがあります。
ヨシ紙を使用したハガキ購入のご相談も承っております(ご相談はこちら)
定型ハガキ(手漉き・機械漉き)・絵ハガキにも対応できます。
- 封筒
封筒もヨシ紙で作ることができ、手紙などを送る際にも使用されます。
ヨシ紙を使用した封筒購入のご相談も承っております(ご相談はこちら)
- 手紙セット
ヨシパルプのみで手漉きした特選手紙セットも取り扱っております。(ご相談はこちら)
- 資料・パンフレット・広告用途に
ヨシ紙を活用した資料の作成、パンフレットやカタログ、広告用途としても使用できます。
美しい質感が商品やサービスの魅力を伝えます。
- アートプロジェクト
ヨシ紙はその独自の質感から、アートプロジェクトやクラフト制作にも広く活用できます。
アーティストやクリエイターにとって、創造性を刺激する素材となります。
ヨシ紙は、その環境への貢献と多様な用途から、紙製品市場において重要な存在となっています。
持続可能性と品質を組み合わせたヨシ紙は、環境配慮型の製品を求める企業や消費者に支持されています。
ヨシ紙の環境への貢献
ヨシ紙を使用することで環境にどのように貢献するかまとめます。
- 再生可能な資源の活用
ヨシは速い成長速度を持つ植物であり、紙の原料として使用されるために再生可能な資源として適しています。
ヨシを収穫する際には、新たな樹木の伐採が少なくて済み、森林資源の保護に寄与します。 - CO2排出の削減
ヨシ紙の製造プロセスにおいて、木材の伐採から木材のパルプ化に関連するエネルギー消費が削減されます。
木材パルプ化に比べてエネルギー効率が高く、二酸化炭素(CO2)の排出を削減します。 - 森林保護
ヨシ紙の生産において、木材伐採が減少することにより、天然森林の保護に貢献します。
これは生態系の保全や野生動植物の生息地を守る点でも重要です。 - 水質の改善
ヨシの栽培地域は湿地帯や水域にあり、ヨシの栽培が水質浄化に寄与します。
ヨシは水中に含まれるリンやチッソを吸収して育ちます。
リンやチッソは、水の富栄養化の要因であり、これを吸収するヨシは水質を浄化する作用があります。
ヨシは刈り取りやヨシ焼きを行わなければ、その数は減少していきます。
ヨシを紙として使用することで、ヨシの立ち枯れによる河川の流入を防ぐことができます。
ヨシ紙 まとめ
ヨシ紙は混抄紙の一種であり、その環境に優しい特性と多彩な利用方法から、名刺、ハガキ、封筒以外の分野でも広く活用されています。環境への配慮と高品質な印刷物としての特性が、さまざまな分野で評価されています。環境に配慮した紙選びは、私たちの地球への貢献に繋がり、持続可能な未来の構築にも繋がります。
- 再生可能な資源の活用:ヨシ紙はヨシを主原料とし、再生可能な資源を積極的に活用しています。
- 森林保護と木材伐採削減:ヨシ紙の製造において、木材の伐採を減少させ、天然森林の保護に貢献します。
- CO2排出の削減:製造プロセスのエネルギー効率が高く、CO2排出が削減されます。
- 水質浄化:ヨシの栽培は水質浄化に寄与し、水域の健康を維持します。
- 多様な用途:名刺、ハガキ、封筒など、紙製品として多くの用途に適しています。
- 高品質の印刷物:滑らかな質感と高品質の印刷が可能で、印刷物としても優れた性能を発揮します。
- 持続可能性と品質の組み合わせ:ヨシ紙は持続可能性と品質を両立させ、環境に配慮した紙製品を提供します。
ヨシ紙の活用 お問い合わせはこちら
弊社では、ヨシ紙単体での販売や、ヨシ紙製品(名刺・ハガキ・封筒など)の取り扱いもございます。
また、ヨシ紙を様々な形に加工してご提供することも可能です。
ヨシ紙について興味がありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
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